禁断の実験「万年筆のインクを混ぜてみる」
一般的に万年筆のインクは、
- 同じメーカーの同じインクでも継ぎ足しをすることはNG
- 同じメーカーでも混ぜて使用することはNG
と言われています。
1点目の継ぎ足しは、少なくなってきたインクが吸入しにくいのでやりがちではありますが、吸入の際に小さなゴミが入り込んでいる可能性があります。
些細なことですが、毛細管現象と気液交換作用で筆記できている万年筆なので、トラブルを避けるためにも継ぎ足しは行わず、少なくなって吸入しにくい場合はスポイトやガラスペンで使用するようにしましょう。
2点目のインクを混ぜる。という行為です。
プラチナ万年筆さんの「MIXABLE INK」や呉竹さんの「ink-café」のように、混ぜて好きな色のインクを作ることを前提としているインクでも、そのシリーズ内のインク同士の混色が可能なだけで他のシリーズや他社のインクは混ぜないように言われています。
他のインクを混ぜることはNG と言われていますが、では混ぜるとどうなるのか?を実験してみました。
顔料インク x 水性染料インク
SAILOR さんの顔料インクの「極黒」とSAILOR さんの「BLUE BLACK」を1:1で混ぜてみました。
それぞれのインクを混ぜて書いたものが下の写真です。
混ぜて少ししたら、付けペンでしたが明らかに粘度が高くなったことが分かりました。
何より驚いたのは、混色して30分から40分程度でインクの状態が変わっていたことです。
同じ時間帯に水性染料インク同士を混色したインクは、見た目には混色直後と同じように見えてましたが、これは明らかに乾燥してインクの濃度が見るからに濃くなってドロっとした感じなっていました。
明らかに顔料と染料の組み合わせはヤバいです。
水性染料インク x 水性染料インク
SAILOR さんの「四季織」シリーズ同士の「夜焚」と「金木犀」を1:1で混ぜてみました。
赤系と黄色系を混ぜればオレンジ色系になるので、この2色を選択しました。
鮮やかなオレンジ色とはいきませんが、まぁほぼほぼオレンジ色になりました。
時間が経過してもさほど粘度の変化は体感しませんでした。
一時的にであれば、自己責任の範囲で混色して楽しむのもありかな・・・
結果
万年筆のインク成分は、基本的には色の元となる「色材(染料・顔料)」と万年筆のインクとしての機能を発揮する「機能付与剤」と「水」からできています。
この「機能付与剤」には「界面活性剤」「pH 調整剤」「保湿剤」「防腐剤」などが含まれています。顔料インクの色材の顔料が、ラメのように底に溜まらないのも、この「機能付与材」の影響です。
顔料インクと染料インクの混色は絶対に避けるべきです。
混色した直後でも、なんだか粘度が上がったように感じるほどで、顔料インクと染料インクが入ったことで「機能付与剤」のバランスが崩れて、とてもインクとして使う勇気が出ません。
今回の顔料と染料の混色の結果で一番明らかなのは、保湿剤のバランスが崩れたことが原因と思われる乾燥です。
目に見えた影響が保湿剤の影響ではありますが、これほど影響が明らかに出るということは、分かりにくい他の薬品でも同じように影響が出ている・もしくは出ると考えることが妥当でしょう。
このことから万年筆に吸入させるインクの種類(染料・顔料)に変更する場合は、より丁寧な洗浄を行う必要があると思います。
水性染料インク同士でも、同一メーカーの同一シリーズでも1つの組み合わせしか試していませんのではっきりとは言い切れませんが、少量の混色であればガラスペンや付けペンでも使えそうかな。と思います。
ただし自己責任ですよ。
同一シリーズでも「機能付与剤」の割合は違うので、使うににしても「機能付与剤」の状態が変わっているので、乾燥しやすくなったり滲みやすくなったり何かしらの影響はあると思いますので、責任を持つことはできません。
今回は万年筆を始めるとよく言われる、「他のインクを混ぜるのはNG」ということをあえて行ってみました。
場合によっては幸運にも問題ないかも知れませんが、染料x顔料のような劇的な変化が起きる可能性もゼロではないので、大事な万年筆を長く使い続けるためにもやっちゃダメなことは避けましょう。
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